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岡山家庭裁判所 昭和34年(家イ)59号 審判 1959年4月15日

申立人 山崎多市(仮名)

相手方 山崎秋子(仮名)

主文

申立人と相手方とを離婚する。

当事者間の長女照美(昭和二五年二月○○日生)の親権者を申立人と定める。

理由

本件申立の要旨は、申立人は昭和二三年六月頃相手方と結婚し、昭和二四年一〇月○日正式婚姻届をし、その間に長女照美が出生しているところ、相手方は昭和三二年頃から不貞の行為があり、一回は相手方が詫状を差入れたので許したが、その後も相手方の行状が改まらず、昭和三四年一月○日には衣類、夜具、米二斗を持つて家を出てしまつた。申立人としては相手方の度重なる不貞行為によつて婚姻を継続し難いので、離婚の調停を求めるというにある。

本件調停委員会における当事者双方及び相手方母田村ヨシの陳述、当庁岡部調査官作成の調査報告書、相手方が作成した詫状を総合して考えると、申立人はこれい上婚姻を継続する意思はなく、その離婚を決意するに至つた原因は、相手方の不貞行為にあるのであるから、申立人の恣意に出たものとは思われない。相手方はたやすく調停離婚に応じないのであるが、不貞行為のあつたことは認めており、相手方母においては相手方が悪いのだから、離婚も已むを得ないといつておる。

このような場合、調停が成立しないものとして本件を終了させ、更めて離婚訴訟により解決させるのが一応至当のようであるが、不貞行為のあつた事実について当事者間に争がなく、相手方としても衣類、夜具等をもつて子供を残したまま申立人方を去り、事実上破婚状態にあつて円満な夫婦生活に復帰することが不可能と認められる本件においては、当事者双方のため衡平に考慮するとき、事件の早期解決を図るため、いわゆる強制調停をしてみるのも一応の策だと思われる。

よつて調停委員の意見を聴いた上、当事者間の長女照美の親権者を申立人と定め、家事審判法第二四条を適用して主文のとおり審判をする。

(家事審判官 富田力太郎)

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